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Pharmacy Leaders Day 2024 に参加してきたよ

みなさん、こんにちは。
けやき薬局の馬場(き)です。

当社で2017年から使っているMusubiを提供している株式会社カケハシが、7/24に東京でイベントを行っていたので、ひのき薬局店長の石川さんと参加してきました。

内容は、撮影・録画禁止&5時間にわたる長丁場でまとめるのも不可能なので、レポートは公式にお任せするとして、私が気になった話題についてあとから調べてみた内容を踏まえてレポートします。

① 何はともあれ薬剤師の質
② 患者フォローアップで予後改善
③ PHRは厚生労働省独占案件にあらず

他にもおもしろい話もありましたけど、上記3つについてまとめてみました(そういえば、KAKEHASHI製品の話はイベント中で全くなかったな)。


① 何はともあれ薬剤師の質


北海道のナカジマ薬局の執行役員 薬局本部 本部長の谷口先生がいろいろと取り組みをお話しされていました。制度化40年前から行っているフォローアップに、BCPモバイルファーマシーオンライン調剤センター(オンライン服薬指導に特化)、自治体のとの見守り協定に、ePRO(後述)の活用と、最近の薬局関連政策の基となるような施策を行っていたらしく、凄いなーと唯々感嘆しました。

店舗業務以外の委員会活動や資格取得支援、学会発表の推奨など、当社でも行っているものはあるものの、上位互換感がやばかったですね。。

当社の学習支援制度についてはこちらをご参考に↑(おさらい)

DXが進むほど、薬剤師の質が重要

話を聞いていた感じ、薬剤師の質が介入行動の閾値とその後の介入行動の質に影響するので、DXが進むほど薬剤師の質が重要になるようです。

  • フォローアップを実施するか否かの判断

  • オンラインだと距離のハードルが無くなるので、専門性、人柄、スキルなどの薬剤師の質が重要になる

  • DXで取得したデータを活かすも殺すも薬剤師のアセスメント次第

薬剤師がポンコツだと、データがあったところで無意味だし、最終的には選ばれなくなるよという警鐘ですね(気を付けよう・・・)。

薬剤師の質を向上させる一助としての資格取得

ナカジマ薬局さんでは、資格取得を支援しており、奨励金がもらえたりするそうです。

資格取得=質の向上 ではないとは思いますが、資格取得をすることで勉強しますし、薬剤師の質をあげるためのモチベーション(内発的動機付け)にはなると思うので、有用なんでしょうね。

資格取得支援のために、組織横断的な委員会活動をやっているそうです。

確かこんな感じだったよ

専門・認定資格ってたくさんあるけど、どうランク分けするの?と人事制度改定をした際に疑問に思っていたので、なんだかとってもスッキリしました。こういった仕組みは、トップランナーを見習って当社でも整備していきたいですね。

"オンリーワン薬剤師になるために"

目次の表題で話されていた中で印象的な言葉だったのが、以下の言葉です。

大切な非効率を見つける

しびれました

DX、効率化、専門性、と高度化していっても、人と人の関係なので、挨拶やちょっとした雑談、お見送りに、寄り添うなどの非効率な部分を「大切なもの」として残していくかというのは見習いたいなと思いました。

② 患者フォローアップで予後改善


当社でも以下のようなフォローアップやモニタリングを行っていますが、エビデンスがあるのか?という話は、そういえばあんまり考えていませんでした。

  • 電話でのフォローアップ

  • Pocket Musubiでのモニタリング

  • Musubi Insightの患者リストからの脱落予防フォロー

「フォローアップはアウトカムを改善するのか?」という疑問について、東京医科大学病院の東先生のお話が面白かったです。がん専門薬剤師・がん指導薬剤師など肩書がすげぇと思っていたら、、

当社slackでのやりとりの一部

橋本さんの大学時代のやきものクラブの先輩ということで、(勝手に)親近感が湧いて、前のめりで話を聞いてしましました。笑

PRO(患者報告アウトカム)

患者報告アウトカム(Patient-reported outcome: PRO)って言葉を知っていました? お恥ずかしい話ですけど、私は知りませんでした。(ドヤ)

PROとは、臨床家その他の誰の解釈も介さず、患者から直接得られた、患者の健康状態に関するあらゆる報告である

FDA Guidance の和訳だそうです。

臨床アウトカムを死亡や発生率などの医療者視点の情報ではなく、患者さんの主観的な情報として得ようという取り組みなんですね。

なぜ医療者ではなくて患者報告?

こちらも説明されていましたが、抗がん剤による副作用について医療者判断と患者主観を比較した場合、医療者は患者の副作用評価を過小評価する傾向があるそうです。

N Engl J Med 2010;362:865-869 から作成(和訳改変)

これまでは、がん領域で副作用評価でCTCAE(有害事象共通用語規準)を利用して医療従事者が副作用評価をしていましたが、

一部の患者さんが自己評価できる指標についてPRO-CTCAE(患者さんが自主報告する際の有害事象共通用語規準)を利用して、PRO(患者報告アウトカム)として有害事象を収集しようという方向に最近の研究は変わりつつあるそうです。

PROは予後を改善する?!

患者さんが副作用を自主報告することで、予後が改善するという報告が紹介されていました(すごいよね!!)。

アウトカム:全生存率(HRQoLから変更に注意)
PRO群    31.2 months (95% CI, 24.5-39.6)
通常治療群  26.0 months (95% CI, 22.1-30.9)
ハザード比  0.83 (95% CI, 0.70-0.99; P = .04)

766人をランダム割付して約7年追跡

ちなみにもう少し昔の論文では健康関連のQOL(HRQoL:Health-Related Quality of Life)が改善するという論文もあるみたいです。

がん領域の副作用情報の研究が他疾患に直接適応できるのか?ということについては議論があると思いますが、ポジティブな結果が多いので、他の疾患でも研究されて、PROでポジティブなアウトカムが報告されてくるのかもしれないですね…。

e-PRO

「PRO(患者報告アウトカム)をデジタルで行おう」というサービスを、e-PRO(electronic Patient Reported Outcome)というそうです。パネルディスカッションの中では、「Welbyマイカルテ」というサービスが紹介されていました。

こちらのサービスは、各種のバイタル測定機器からの情報も統合して管理できるPHR(後述)の側面もある、e-PROサービスのようです。

薬剤情報から自動で聴取を行うPocket Musubiもe-PROに該当するのかな? 現状は受け付けた処方箋情報のフォローしかできないので、マイナ保険証連携→併用薬・疾患で自動フォロー→薬局にアラートとかできたらとても良さそうですよね。

③ PHRは厚生労働省独占案件にあらず


PHR(Personal Health Record)は、個人の健康記録を一元管理するようなサービスを指しますが、厚生労働省の他、経済産業省でも取り組んでいるらしいです(知らなかった)。

おさらい:薬局でイメージするPHR(厚生労働省)

我々薬局で働く人がイメージするPHRは、医療情報や健診情報をマイナポータルで統合して、それを閲覧できるようになるというイメージですね。

厚生労働省の資料より。マイナポータル万歳!

経済産業省の目指すPHR像

PHRを医療だけでなく、異業種間連携をしていこう、ウェアラブルデバイスなど医療情報以外の身体情報も活用していこうという点が、より広くなっているようです。

令和5年度ヘルスケア産業基盤⾼度化推進事業報告書 より

医療というよりは、生活全般に関わるので経済産業省も施策を検討するんですね。ウェアラブルやモバイル端末から得た情報を、購買行動やフィットネス、仕事や家庭にも活用していこうという広範囲な「未来図」になっています。

参考:会津若松市のPHR構想

PHRは用語として会津若松市民は10年位前からよく耳にする単語だったので、馴染みがありますね。医療情報のほか、IoT機器から取得した情報も活用しようという物がデジタル田園都市構想の資料に載っていました。

「スマートシティ会津若松」の取組とビジョン より

しかし、悲しいかな。経済産業省が本腰を入れて取り組めば、あっという間に地方の実証実験は陳腐化しそうな予感がします…。キビタン健康ネット(ID-LINKHuman Bridge)もマイナポータルに取り込まれていくんじゃないかなぁ。

PHRのデータ規格も統一されそう

経済産業省の主導で、ガイドラインを民間事業者に作成してもらい、安心して使ってもらえるための環境整備を実施しているそうです。

2023年12月1日時点で127事業者が加入しているようです。

AndroidでもHealth connectという、色々なアプリからの身体・健康関連データを統合するアプリがリリースされており、いろいろなサービスの情報を水平統合していこうという世の流れのようです。

これからのご時世で個人の管理情報ならスマホ管理になるんでしょうから、Android のHealth connectか、iOSのApple ヘルスケア にはデータ連携で対応して欲しいですね。

ユースケースが大阪万博で展示されるらしい

2025年開催の大阪万博(なのか、別イベントなのか良く分からないけど)で、情報連携基盤を活用したユースケースの体験展示やサービス提供を実施予定だそうです。

2025年大阪・関西万博アクションプランより

もしご興味ある方いれば、大阪万博に行って体験してみて、ぜひ私に教えてください!

まとめ:カケハシはプラットフォーマーになれるのか?


最後のパネルディスカッションは、KAKEHASHIの執行役員の西田庄吾さんが進行をしていました。(西田さんは以下の記事でとても面白いことを書いていているのでぜひ読んでね)

マイナポータルとの連携しかり、電子処方箋しかり、PHRとの連携しかり、今後どうなっていくかの見通しがあまり立たない現状ですが、ユーザーの立場からするとMusubiシリーズが使いやすいサービスになって欲しいですね。

[患者価値] = [包括的なアウトカム] ÷ [予防・診断・治療・予後に要する包括的なコスト]

Value Based Healthcareの方に書いてありした

DX以外の文脈でも人口減少局面ということを考えると、アウトカムに対するコストを頭に置いて薬局サービスというものを見直していく必要がありそうだなと思います。こういったイベントに参加するとKAKEHASHIはまだまだビジョナリーな感じがするので、引き続きしっかり使っていきましょー

おまけ

会場は大手町三井ホールで大変都会的でおしゃれでした(緊張した)

先日ベンチプレス100㎏の目標を達成しご機嫌の石川さん
先日首相と握手したらしい、当社ではおなじみのKAKEHASHIの山﨑さん
なぜか逆光で太陽拳を決めようとしている頭の弱い私・・・

以上、みなさんも機会があれば、都会のイベントに参加してみてくださいね!!(日帰りで行けるよ)