薬局の最近の話題をてきとーにまとめてみた(政策議論)
みなさん、こんにちは。
けやき薬局の馬場(き)です。
2024年4月はトリプル改定なので、中医協などの議論がさかんになっていますね。あんまり流れがわかっていないと改定についていけなくなっちゃうので、てきとーにまとめてみます。
私もそんなに詳しいわけではないですけど、社内で全体を把握するのが苦手というひとが多いと耳にしますので、ないよりマシかなと思う程度にがんばってみました。まとめてみると今の薬局業界は、「The 転換期」でとても刺激的なんじゃないかなと思います。
そもそも的な基礎知識
以下の単語はなんとなく知っているという前提で話を進めますね(知らない場合は、薬局業界の常識としてさらっと読んでおいてね)。
地域包括ケアシステム
施設・病院があふれるので、地域・在宅でという基本方針です。患者のための薬局ビジョン
健康サポートやかかりつけ、高度薬学管理などの現状求められている機能が示されている指針です。薬剤師が地域で活躍するためのアクションプラン
具体的にどうしていこうみたいな今後数年の課題が明示されています。認定薬局(地域連携薬局及び専門医療機関連携薬局)
2021年8月からスタートした薬機法上に規定される薬局の認定です。重要なのは法律上で規定されているという点です。政策の診療報酬による利益誘導
国の求めている医療政策には点数が厚く付くよという、日本の調剤報酬でも見られる決定方式です。中央社会保険医療協議会(中医協)
診療(調剤)報酬や薬価などについて議論する厚生労働省の諮問会議です。みんな大好き調剤報酬改定はこちらで議論されます。
社会保障全般の話
私たち薬局は、国民皆保険制度の中の調剤報酬というものに規制されて日々業務を行っていますので、基本的に国の社会保障政策の流れに流されていくと考えるべきでしょう。 社会保障の話では、全世代型社会保障構築会議 というものがあり、全世代型社会保障構築会議報告書 が2022年12月にまとめられていてわかりやすいので、そちらを見てみます。
全世代型社会保障?
最近の単語なのであまりなじみもないですけど、「少子高齢化・人口減少時代」に破綻しないための社会保障という意味のようです。
基本的に今までの日本の社会保障(年金や医療保険など)は、若者が高齢者を支える「世代間扶養」という考え方に基づいていましたが、それではもう支えきれないから、支える人を全世代に拡大して何とかする方向へ転換が必要という話ですね…
<身近な話題>短時間労働者への社会保険への加入
いままでパートで短時間だと社会保険未加入、「扶養の範囲で」というものができました。社会保障の仕組みの変化で、これからは「扶養の範囲で」ということがむずかしくなるかも知れません…。弊社のような企業も対象になりますけど、2024年10月から50人以上の企業では20時間超で社会保険に加入が必要になります。
📝5秒で読めるまとめ
現在の社会保障制度がこのままいくと破綻するので、全世代型へ移行していく必要があるそうです。
少子化・人口減少の対策
ずっと言われているけど、なかなか対策がむずかしいやつなので引き続き、国でもがんばるそうです。高齢化への対応と労働力の確保
今まで区分けの就労可能人口が減るので、幅を広げて就労人口を維持しようという考え方と、現役世代が社会保険料負担でパンクしないように高齢世代にも払える人は払ってもらうという方針のようです。地域包括ケアシステムの深化
これからも政策の骨子は地域包括ケアシステムにあるようです。医療DXやら、地域共生というのもその延長線上の話みたいですね。
薬局周りの検討会など
続きまして薬局の方に目編を移します。ご自分で情勢を把握したい方は、最低限以下を見ると良いかも?
財政制度分科会(社会保障分野)
いわゆる「財務省案」ってやつですね。医療業界から見ると毎回やや過激です。中医協
診療報酬・調剤報酬の議論はこちらでされるので、たまに見ておくと良いかもしれないですね。規制改革推進会議
オンライン服薬指導や調剤外部委託、フォローアップなどはこちらで議論されていたようです。医薬局が実施する検討会等
薬剤師の職能やら、薬学教育やらいろいろな検討会が行われているみたいです。
話題も多いので気になる所だけ切り抜き
改定に向けた議論も始まったばかりの段階なので、そんな話が出ているんだなーくらいの感じで読んで下さいね。来年4月どうなるのかなー
地域支援体制加算≒地域連携薬局??
財政制度分科会(令和5年11月1日開催)資料 に詳しく記載されていますが、地域連携薬局を薬機法に入れたんだから、それを要件にするのは当然でしょう?という議論がなされています。
そもそもなんで認定薬局ができたんだっけ?みたいな所は以下でしょうか。
地域連携薬局などの認定薬局が法律に組み込まれた背景としては上記のような考えがあるようなので、認定→患者利便性→報酬という風な話になってもおかしくないですよね。法律改正って結構大変らしいので、一度施行された法律の内容は、基本的にその通りに運用されると考えた方が良いようです。
また、基本料1もゆるい!とご指摘されているようなので、集中率などの見直しもあるのかな?どうかな?
現行でも、
基本料1(42点)+地域支援体制加算2(47点)= 89点
が集中率要件に引っかかると、
基本料2(26点)+地域支援体制加算3(17点)= 43点
とかになったりする可能性があるので、まぁまぁおっかない議論ですね。△46点×2000枚=△92万円!なので、薬剤師1名置けるかどうかに関わるかもしれません。
このあたりは企業として対応が必要になってくると思うので、みなさんご協力くださいねー
長期収載品で自己負担額が変わる?
中央社会保険医療協議会 総会(第567回) の資料に記載がありましたけど、長期収載品(たとえば、ジェネリックのある先発医薬品など)について、自己負担額が増えるかも?という議論がされています。
どうやるか?などは議論の最中でよく分からないですが、後発品の価格までが保険給付の範囲で、それ以上を超えた場合は何らかの形で患者さんに請求する形になる日が近いかもしれないですね。
こちらが実装されると後発品を推進する意味合いがなくなるので、「後発品体制加算」は今後なくなっていくかもしれないですねー
薬局管理栄養士の居宅療養管理指導
第230回社会保障審議会介護給付費分科会 で薬局の管理栄養士の居宅療養管理指導について議論されたようです。
こちらは議論されたものの実績不足で見送りになったようですね。ひのき薬局でも認定栄養ケア・ステーションを取得したりで、期待していたのでちょっと残念です。自分たちとしてできることは、低価格でもよいので実績を作って学会発表などで実績を公開していくことが大切かもしれないですね。
マイナカードとPHRと電子処方箋
財政制度分科会(令和5年11月1日開催)資料 には、いわゆるPHRについても載っていました。「全国医療情報プラットフォーム」という医療情報の公共データベースだそうです。 第5回「医療DX令和ビジョン2030」厚生労働省推進チーム資料 にも同様のことが触れられていましたので、きっと政策として進んでいくんでしょうね。(2016-2018年あたりに良く取沙汰された、 PeOPLe って続いていたんですね。。)
オンライン資格確認と医療情報プラットフォームが連携して、そこに電子処方箋が乗っかると、薬局の業務がかなり変わるだろうことが予測されます。
電子処方箋は、運用が始まっているものの導入状況は低調なようなので、まだまだこれからな分野みたいです。便利そうだから、普及してほしいなぁと祈ってますけど、設備投資がかかる分むずかしいのかな?
電子処方箋にしても、全国医療情報プラットフォームにしてもマイナンバーカード(マイナ保険証)がキーになるようなので、薬局でも声かけして、普及活動をする日が来るかもしれないですねー
調剤の一部外部委託
規制改革推進会議の医療・介護・感染症対策ワーキング・グループの第3回や 第11回 で触れられており、ガイドラインも作成されて実証実験に向かっているようです。
◆ガイドラインに書いてあったこと
業務委託契約で、薬局⇔薬局で実施
当面一包化のみ?
受託薬局は ISO9001 などの外部認証が必要(意外とハードル高い!)
委託側でも検品が必要(遠隔で検品だって!)
大阪で、 薬局DX推進コンソーシアム が行政と特区申請を行ってやっていくようです。
特区で先進的な薬局がいろいろチャレンジして上手くいけば、法改正→一般普及となっていくのでしょうね。
薬局の収益のお話
最後に、ちょうど 第24回医療経済実態調査の報告(令和5年実施) が公表されていたので、現在どうった薬局の収益性が高いのか?をサラッと見てみましょう。(今儲かっていても、将来も儲かるとは限らないけど)
基本料の前提になっている立地
細かくて見づらいので、必要そうなところだけ切り出してみました。。
なんだかんだ言って、大病院前や敷地内薬局をやれるだけの資本のある会社にとっては、基本料が下げられても大病医院前は効率良く稼げて経営効率が良いようです。うちみたいな中小企業には縁のない話ですけどね。
あと、医療ビルだったり、医療モールだったりの数年前から流行っている立地形態の薬局は利益率が7-8%となかなか高いみたいですね。。
The エリート・認定薬局
2023年10月31日時点で、地域連携薬局は3968件、専門医療機関連携薬局は173件認定されていそうです。全国の薬局が2022年時点で62,375件 とのことですので、薬局の6-7%の頑張っている上澄み層なんじゃないかなと思います。こちらも見づらいので切り出し。
法人の運営している地域連携薬局は、平均の売上が5億!となかなか大規模薬局なので、(今回の統計上は)街中の薬局というよりは病院前の薬局が取得するケースが多いのかもしれないですね。
こういった資料は相関関係を見ているだけなので、認定を取る=儲かる訳ではなく、すでにそういった背景のある企業が先んじて認定を取得していると考えてくださいね。
大手はそもそもビジネスモデルが違う?
同一グループの保険調剤を行っている店舗数ごとの薬局単位の収益をみているパートもあり、なかなか興味深いです。 利益率的には、6店舗以上になると6%超で安定するようです。
300店舗以上のチェーン薬局の1店舗あたりの年商が4億円を超えており、大型店舗が多いことが伺い知れます。
また、処方箋単価も法人規模が大きくなるほど上がっていき、処方箋1枚当たりの粗利も増えていきます。やはり規模の経済による薬価差益というのは無視できないようです。
中小は比較的小規模店舗で基本料+加算を確保するビジネスモデル、大手は大病院前の大型店舗で高単価の処方箋をたくさん獲得して薬価差益で稼ぐモデルと、そもそもビジネスモデルが違うのかも知れないですね。
その他
他には、居宅の算定回数ごとに分けたり(居宅が月20件と切り方がゆるいので在宅専門薬局みたいな形態の数値が見れない)、基本料ごとに分けたりしているので、ご興味があれば自分で見てみてください。
まとめ
なんだかきれいにまとめようと思ったんですけど、とりとめがなくなってしまいました…。今回取り上げたような点は、薬局や薬剤師の制度としての検討事項なので、薬剤師の専門性や実際にやる事の手前の仕組みの問題という点に注意が必要だと思います。
📝最後に5秒で読めるまとめ
仕組みが変わってきているので、今後5-10年で薬局や薬剤師の仕事の仕方も変わる可能性が高い(変われない企業や薬剤師はしんどい)
調剤報酬改定なども基本的な骨子があって、それに基づいて変更されている
政策の利益誘導があるため、政策フィットしていく事が中小企業としては大切なので、調剤報酬改定などにも興味を持ってほしい
あたりを理解してもらえると、国が社会保障の変革をしようとしている最中で、私が突飛なこという人ではないということがご理解頂けるのではないかと思います(情報過多で、正直私もお腹いっぱい)。
来年がちょっとドキドキですけど、引き続きがんばっていきましょー