見出し画像

「福島県の人口が3割減る」という話

みなさん、こんにちは。
けやき薬局の馬場(き)です。

昨年末に「2050年までに福島県の人口が3割減る」というニュースが流れていました。

せっかくなので、「自分たちの住んでいる地域が今後どう変わっていくか?」という点を統計データをもとに考えてみようと思います。


基になっている統計データ

ニュースは以下の情報がもとになっていますね。

◎国立社会保障・人口問題研究所 日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)

◎国立社会保障・人口問題研究所とは?

国立社会保障・人口問題研究所は、厚生労働省に所属する国立の研究機関であり、人口や世帯の動向を捉えるとともに、内外の社会保障政策や制度についての研究を行っています。

https://www.ipss.go.jp/pr-ad/j/jap/index.html

福島県だけ見てみると?

私たちの事業拠点は福島県のみなので、福島県だけ抽出してもうすこし詳しく見てみることにします。「都道府県・市区町村別の男女・年齢(5歳)階級別将来推計人口」というデータで市区町村別の推計が確認できます。

グラフにしてみた(自前)

パット見で分かりやすいようにグラフにしてみました。事業者目線なのであまり細かく見る必要もないので、新聞記事とは年齢の区分けを変えてあります。

◆グラフ作成でいじった所
元データ:5歳きざみ → グラフ:10歳きざみ
グラフの系列の色分け
 >高齢者(70歳~) 赤
 >就労者(~69歳) 緑
 >未成年(~19歳) 青

あれ??赤い幅のサイズ変わらなくない??

数字でも見てみる

70歳以上の人口は変わらんのかーい

福島県の人口は「2050年までに3割減る」らしいですが、70歳以上の人口はほぼ横ばいで変わらず、未成年が半分に、就労世代が6割になるというのが、実情なようです。70歳までの再雇用をMUSTとしても、6割の人員で現状と同じ高齢者世代を支えるという全世代型社会保障が必要になる社会の到来ですね!

会津地方を見てみると?

我々の事業拠点は会津若松市にありますので、会津地方で見てみたいと思います。すでに高齢化率30%超ですのでどうなるのかな??

会津若松市

2020年:117,376人 → 2050年:76,262人(35%減)

より少子高齢化→人口減少が進んでいて、高齢者人口も減っていく
2050年の高齢化率、なんと44%(33,558/82,061名)

会津地方(全体)

2020年:256,403人 → 2050年:148,151人(42%減)

会津若松市が占める比率 
2020年:45.8% → 2050年:51.5%(5.7%増)

下げ幅が都市部より大きく見える
高齢者ですら、人口のピークを迎えていてあとは減っていくのみ。

載せてはいないですけど、南会津地方では人口が半分になってしまう予測なので、地方の過疎化が進み都市部へ人が集約されていく=地方の地域包括ケアシステムが崩壊するかもしれないという将来が見える気がします。

補足:福島県は「会津地方」「中通り」「浜通り」の3つの地域に分類されます。

社外の読者の方へ
福島県。左から「会津地方」「中通り」「浜通り」と呼ぶんですって

薬局関連の現状把握

「薬剤師や薬局は人口あたりどのくらい必要なんだっけ?」というおさらいで、現状把握をしてみます。

現状:薬剤師数や薬局数

日本医師会の提供している「JMAP」という地域医療情報システムから、サクッと参照してみます。

<会津若松市>
薬  局 76か所
薬剤師数 180人(人口10万人あたり153.35人)

https://jmap.jp/cities/detail/city/7202

福島県の保健統計のページからも薬剤師数を確認してみます。

薬剤師数 296人(平成30年12月31日現在)

福島県 保健福祉部関係の統計情報データベース

あれ?
これは病院と薬局とかで集計対象がちがうかもしれないですね。病院薬剤師が100人というのは妥当な気がしますので、薬局薬剤師が180人くらいなのかもしれません。

全国平均との対比

薬局数

薬局数(人口 10 万対) 全国49.9か所

令和4年度衛生行政報告例の概況

薬剤師数

薬局・医療機関従事者(人口10万対) 198.6人
薬局従事者(人口10万人対)     149.8人

令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況

全国の薬剤師数から、会津若松市の薬局従事者は人口10万人あたり153.35人が妥当そうですね。

諸外国との対比

業務内容に差異があるので一概には言えないと思いますけど、諸外国では人口1000人あたり1人くらいの薬剤師が平均的な数値なようです。薬剤師の専門分化が進んで、薬剤師以外の職種が活躍するという今の調剤作業の業務シフトの流れの行きつく先なんでしょうね。

医療関連データの国際比較-OECD Health Statistics 2019- から引用

会津若松の人口予測に薬剤師数を外挿してみる

人口が減っていく現状を踏まえて、薬局と薬剤師数がどのくらい減るのか?を考えてみたいと思います。とりあえず、お馴染みの中位・低位・高位の3パターンくらい考えてみます。

薬剤師と薬局の人口比率が変わらないパターン(中位)

この場合は、人口が減るので地域の薬局と薬剤師の数も減りますね。一番推測しやすい未来かもしれません。

薬剤師も薬局数も↓↓

ただ、高齢者の数はそこまで減らないので、1薬局あたりの70歳以上人口は増えていきます。人口は35%減るのに、受け持ち患者は1.38倍にUP?

薬局の人口比率が下がっていくパターン(低位)

よく厚生労働省関連の会議でも「薬局が多すぎる」と言われているので、人口あたりの薬剤師数は変わらず、人口あたり薬局数が全国平均値に近づいていくと想定したパターンです。

1薬局あたりの薬剤師数はUP?

人口当たりの薬局数が全国平均の10万人あたり50軒に近づいていくと、2050年には人口も減るから薬局の数は半分になっちゃうらしい??(怖い) ここでも70歳以上の人口はそこまで減らないので、1薬局あたりの70歳以上人口は1.82倍にUP!!

薬剤師の職能改革とかで、人口あたりの薬剤師数が減るような政策になるとよりハードな環境が見えてくるかもしれないですね。

薬剤師があまるパターン(高位)

そこまで考えられないかもしれないですが、薬剤師がいずれ需要の上限を迎えて余って地方への流入量が増えるパターンです。

いちばんしんどくない未来かも?

都市部で薬剤師があまる→地方に流れてくると、地方の薬局の充足感はましになるかもしれないですね。

で、どうしていくべきか?

私たちは薬局の事業者なので、薬局の運営面を考えていく必要があると思います。データを見て「はい、そうですか」という訳にはいかないんですよね。。いくつかアイディアを出してみましょ。

人手不足倒産を回避する

「就労可能人口が減る=優秀なスタッフの確保に苦労する」です。
働く人がいなくて事業が立ち行かなくなることは避けないといけないと思います。人員の確保という側面では、就職希望者から企業側が選ばれないといけない売り手市場になる可能性もありますので、働きやすさやその場所で働く意味、就労者のキャリアアップにつながるかなど視点が必要になっていくと予測されます。

人的資本という言葉がここ最近流行っていますが、リアルに「スタッフ=資本」になる日が人口減少社会では来るかもしれません。

人員の必要性を下げる

今後地方から人が減っていくというのは、ほぼ確定している未来ですので、より人手が要らない方向へ仕事の仕方をシフトしていくという事が必要になっていくかもしれません。

ChatGPTなどの生成AIの活用やシステム化(IT化)、機械化で少人数でも運営できる体制にしたり、仕事の枠組みを見直して要らない仕事を省いていく必要があるかもしれないですね。

地域単位で尖った取り組みをする

我々地方企業は、帰属する地域の魅力がそのまま企業の魅力にも一部反映されるという点を考慮しなくてはいけないと思います。地域がイケてなければ、その地域の人口は減る一方なので、薬局としての事業も先細りです。

積極的に地域の方と連携したり、他業種とコラボ企画を練ったり、行政と協力したりといった取り組みがより重要度が増してくるかもしれないですね。地域ごとの違いなんてよほどじゃないと分からないですし、なかなか都会の人からは興味を持ってもらえないので、地方は尖っていった方が良いように私は思います。

ニッチを攻める

ランチェスター戦略などで有名な戦い方ですが、ニッチ(局地)で優位性を保って大きな対抗馬と戦うという事業戦略です。高齢者数は維持されるので、地方で特化してシェア的な優位を獲得して潰れない様にするというやり方もありかも知れません。

今からできる小さな取り組み(案)

こうしたら人口減少社会でも楽しく働けるんじゃないのかな?という案を考えてみました。笑 気軽にみんなでやってみませんか?

① アイディア出しは積極的に

不確実性の高い将来なので、ご意見、アイディア、提案が出せることが重要で組織の強味になっていくと思います。内容はなんでも良いですけど、お気軽に社内のslackに投稿したり、同じ薬局のスタッフでディスカッションしてみてください!「こんなことしたら良いんじゃないか?」「こうしたら楽しいんじゃないか?」など気軽に発言できると、どこかで良いアイディアが出てくるんじゃないかと思います。

私も「こうしたらいい!」という明確なアイディアがある訳ではないので、ぜひ同じ地域に生活拠点のある仲間として、三人寄れば文殊の知恵方式で考えていきましょー(頼りない)

② 地域の魅力もぜひ発信して

地域の魅力=企業の魅力になる側面がありますので、日常的に情報発信をしていくことが、長期的にみると地域の魅力が増していく可能性につながると思います。

このオープン社内報でも、リアルなスタッフ目線の記事を増やしていきたいと編集長と話していましたので、今後も執筆にご協力をお願いします!

③ 困ったら相談して

人口減少=頼れるスタッフは会社の資産、です。私も環境整備には努めますが、働いているスタッフ間でも「お互い様」とお互いの事情を斟酌してあげられる心の余裕を持てるように意識できると良いのかなと思います。

また、相談してもらえないと企業としての対応が難しいので、困ったり、悩んだらぜひお気軽にご相談ください。

もし社内の人には話しにくいということがあれば、Smart相談室などの外部サービスも活用してくださいね↓


以上、薬局から福島県の人口減少を考えてみた話でした!