地方の薬局目線で2024年調剤報酬改定の短冊(個別改定項目)を読んでみた
みなさん、こんにちは。
けやき薬局の馬場(き)です。
ドキドキする調剤報酬改定が迫ってきましたね。1/26の中医協総会の資料で個別改定項目(その1)【いわゆる短冊】が公開されていました。
どんな方向性で調剤報酬が改定になるのか?を知っておくことが、スムーズに対応していくために必要だと思いますので、サクッとまとめました。
1.基本料、2.選定療養費、3.指導料、4.その他 で分野ごとに分けてあります。
なるべく細かい所は排除したので、できればみんな読んでね。詳細を見たい方は、見出しに該当箇所のリンクを張っておきましたのでご活用ください。
1. 調剤基本料と加算
中小薬局にとっては、利益に直結する基本料とその周りの加算について拾い読みしてみます。
1-1. 調剤基本料の集中率の見直し(P667)
調剤基本料1→2へ減額になる際の基準が変わります。
1か月4000枚超の薬局についてだけですが、集中率計算の分子が、1医療機関→上位●医療機関へ変更です。医療モールや医療ビルへの対策だと思われます(集中率については全般的に切り下げて、もっとハードな条件になるかと思っていました…)。
1-2. 地域支援体制加算(P668~690)
地域支援体制加算1・2については、回数要件を9個→10個に増やして、回数要件は3・4に比べて引き下げ、該当項目数はUPさせるという基準になりました。
要件⑨は、新規追加です。
小児特定加算の算定が要件に追加になりました。対象となる医療的ケア児は、全国で2万人しかいないらしいので会津若松で来局されることはあるのかな??障がい者手帳を確認する必要あるそうです。
あと、追加になったのが以下の要件です。緊急避妊薬は社内ではたぶん誰も研修を受けていないので、これから研修受講などの対応を考えないといけなかも…
健康サポート薬局の届出要件とされている48薬効群の品目を取り扱うこと
緊急避妊薬を備蓄するとともに、当該医薬品を必要とする者に対する相談について適切に応需・対応し、調剤を行う体制を整備していること
地域支援体制加算3・4については大きな変更はなさそうです。地域支援体制加算2を取るためにはちゃんと、国の方針に合致しないと許さないよということなんでしょうね…
1-3. 後発医薬品調剤体制加算(P692)
1.4. 連携強化加算(P381~383)
当社ではあんまり算定していないですけど、一応…
算定するためには、令和6年4月1日から施行される 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律 の中の「第二種協定指定医療機関」の指定を受ける必要があるようです。
経過措置として、令和6年3月31日時点で連携強化加算を算定している薬局はしばらくの間は、算定を認められると書いてありますね(●●年●●月●●日までの間に限りと書いてあるので、いつまでかは不明)。
1-5. 医療DX推進体制整備加算(P109)
マイナンバーの保険証利用について… というところが、お国の方針の肝でしょう。お薬手帳の声掛けキャンペーンを昔やりましたが、今度はマイナ保険証の声掛けキャンペーンをやるのが良いかも?(すでに主任さんにはキャンペーン企画をお願い中です🙏)
電子処方箋はベンダの都合でずっと未対応なので、算定は厳しいかな?
1-6. 在宅薬学総合体制加算(P489~494)
在宅患者調剤加算を廃止し、在宅薬学総合体制加算が新設されるようです。要件的にはより在宅に特化した内容になっています。
医療用麻薬の備蓄やクリーンベンチの整備、2名以上の薬剤師の勤務など要件としては目新しいものが多いですね。無菌調剤室をがんがん回しているような薬局が対象になりそうです。
ちなみに会津若松市では、無菌調剤自体が院外処方として出ている件数がめちゃくちゃ少ないので、算定できる薬局は(たぶん)ないでしょう。
2. 薬代に選定療養が導入!?(P699)
長期収載品(いわゆる後発品のある先発医薬品)について、選定療養(保険給付と患者の選定による自費の併用を認める仕組み)を導入と記載があります。議論されていたけどほんとにやるんですね…(令和6年10月から施行)
2~4に他の条件も書いてありますけど、特に明確な理由のない物は差額の一部は自費にする方向の様です。(患者さんによる”選定”なので、在庫が無くてしょうがなく先発品とかは対象外ですよ)
お役所の資料だとこんな感じ?
もっとシンプルにするとこれでよいのかな?
お会計は、自費と保険調剤が入り乱れてめんどくさくなりそうですね…、あと、後発医薬品調剤体制加算を無くすための前振りじゃないよなーと邪推しちゃいます。
3. 指導料まわり
薬剤師の普段の仕事に関わる指導料周りの見直しも拾い読み!
3-1. 薬学管理料の見直し(P652~P660)
RMPの活用や安全性情報、2で触れた長期収載品の選定療養費の説明をすると加算がいただけるようです。また、ハイリスク薬の加算の算定タイミングも変わるようです。
特定薬剤管理指導加算1(ハイリスク薬加算)の算定タイミング
・初回
・処方変更時や副作用確認時
・必要があるとき?
特定薬剤管理指導加算3
・安全管理等に関する資料(RMPや安全性情報)を用いる場合
・選定療養の説明・在庫がなくて銘柄を変更する場合
2パターンで算定できます。選定療養は先発品利用時の差額の説明ですね。RMPはあんまり使ったことがなくて、私には使い方の説明が難しいので、誰か詳しい人が解説してくれるのを待ちましょう!笑
3-2. 服薬情報等提供料(P658)
ケアマネに文書で情報提供をした場合は、疑義解釈資料→調剤報酬内で算定が認められるようになりました。 リフィル処方箋はまだあまり見かけないですけど国の方針として普及させたいようなので、経過報告する場合も算定できることは認識しておきましょう。
あと、Xで教えていただいたんですけど、服薬情報等提供料2を患者さんへの電話応対でも算定できたらしいです…(知らなかった…)
2024年改訂では削除されて算定できなくなるようなので、4月までは電話応対をしたら算定しましょう。
3-3. 薬学的なフォローアップ見直し(P399)
糖尿病と心不全の患者さんにフォローアップを行った場合に「調剤後薬剤管理指導料」が新設され、調剤報酬を算定できるようになります。
医師・患者家族の求めがあって、フォローアップを行い、医師への情報提供を文書で行った場合に算定できる指導料です。
糖尿病薬が新規で追加
糖尿病薬が変更
上記は算定するタイミングとして認められていますので、「○○の確認のためにお電話させていただきますね」などと同意を得て、積極的にフォローアップをするのも良いかもしれません。
3-4. かかりつけ薬剤師(P395~398)
いままでは「かかりつけ薬剤師」一辺倒だったものが、「かかりつけ薬局」を考慮した方向に変更になっていると思います。
また、現行のかかりつけ薬剤師の要件の週32時間以上勤務という基準が緩和され、育児介護休業法に基づく時短の場合は24時間以上(週4日以上)となりました。できる時短のママさん薬剤師がかかりつけ薬剤師指導料を算定できるようになるのは、とても良いことだと私は思います。
3-5. 在宅移行初期管理料の新設(P495~498)
在宅導入する場合に処方調整や介護職との連携を行った場合の1stステップに掛かる手間を評価して別の管理料として新設するそうです。
今までは、個人宅の導入に際して居宅の契約が間に合わなかったりで「初回の訪問はサービス」で行うことも多かったですけど、管理料として評価されているので、ご説明して、手数料を頂戴することが望ましいと思います。
3-6. 高齢者施設における薬学的管理(P501~503)
服薬管理指導料3
特養のほかに医療院、老健施設、ショートステイでも算定可能外来服薬支援料・施設連携加算
特別養護老人ホーム(介護保険法7条22は29人以下、7条の27は30人以上の特養)で重点的な服薬管理の支援が必要な場合に、施設職員と協働することで算定可能
というような、在宅専門薬局向けに手厚い改定のように思います。当社では老健も特養も受け持っていないので、あまり関係ないかも知れないですね。
4. その他
4-1. 事務手続きの簡素化・効率化(P63)
施設基準の届出について、電子的な届出が可能になるらしい?(うれしい)
4-2. 無菌製剤処理加算(P499)
希釈せずに詰め替える場合でも加算が算定できるようになるようです。
4-3. 嚥下困難者製剤加算の廃止(P662~663)
錠剤をつぶした場合はすべて自家製剤加算に一本化されました。全部粉砕して用法ごとに分包するような場合は、一包化扱いにして外来服薬支援料2を算定した方が適切かもしれません。
まとめ
どうでしたでしょうか?
さらっと見た感じですが、財務省案などで戦々恐々としていた過激な内容にはならず、フォローアップや在宅方面について評価していこうというような方針が取れる改定のような気がします。
薬局薬剤師の仕事も複雑化して色々分かりにくくなる点もあるかと思いますが、国の目指す方針などを理解して、大枠外さないようにしたいですね。 今回の改定では在宅分野でかなり手厚い改定になっており、全世代型社会保障構築会議の報告書の中で謳われていた「地域包括ケアシステムの深化・推進」という側面が強いのかも知れませんね。
まぁ、目の前の患者さんの健康が向上するように&我々がご飯が食べられるように&働いて楽しくなるように、頭を使いながら薬局全体として皆でがんばっていきましょー💪
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