論文抄読会のお題担当をやってみた
みなさん、こんにちは。
けやき薬局の馬場(き)です。
(DALLEでTOP画像を作成したらあやしいのができました)
2023年から再開したEBM形式の論文抄読会(課外活動)のお題担当をひさしぶりにやったのでまとめてみます。普段は金銭労務契約事業計画システム管理みたいな話しかしていませんけど、一応薬剤師なのでたまにはお薬屋さんネタにもチャレンジ!笑
論文抄読会(ロンブンショウドクカイ)ってそもそもなんだ?という方は上記の橋本さんの記事を読んでね。もし参加されたい場合のslackチャンネルは、 # 課外活動-ebm_jornal_club でオープンチャンネルがありますので、そちらをご覧ください。
おさらい「EBM」って?
もはや常識かもしれないですけど、おさらいです。
「個人の経験も重要だけど限りがあるので、他人の経験も統計学的根拠として利用することで、より良い判断ができそうだよね」という考え方ですね。
EBMの5つのステップ
EBMの実践は、やり方としては定型化されており、5つのステップと呼ばれる手順で実施します。
スマホ片手に普段から皆さんやってますよね?
1. あれ?って疑問を持つ
2. Google検索する
3. ネットの情報を読んで、信用するか考える
4. ググった情報で疑問を解消して何かする
5. 人と話たりで、情報を共有する(ふりかえり)
日常的に行っていることの「もっともらしさ」を上げていこうという取り組みです。なので、むつかしくないよ!
論文抄読会って?
上記のstep1~5をみんなで論文を読みながらやってみよう、という試みです。当グループでも課外活動的に2009年からやっています(中島くんの新人研修として始めました)。
医学論文が英語だし、読み慣れていないし、なんとなくハードルが高そうだしということで、みんなでやれば怖くない的なやつですね。
お題担当とは?
お題担当とは、症例提示と読む論文の選定をする担当者を社内では指しています。橋本さんから「やって」とご指名頂いたので、久しぶりに考えてみました。前述の5つのステップに則ってお題を考えて、論文検索をします。
私も久しぶりにやったので、備忘録替わりにやったことを記録しておきますので、ご参考までー
step1.疑問の定式化
普段からいくつか後で調べよう(プライマリ・ケア認定薬剤師の更新用のポートフォリオにしよう)と保管している事例のストックがあるので、そこからみんなで抄読会をやったら楽しそうな物はないかなーと選んでみます。
今回は、「フェノフィブラートを服用していた患者さんが胆石で入院したため、疑義紹介をして処方を削除してもらった」という事例を取り上げることにしました。
疑問の定式化を行うと以下のような感じですかね?
PECOとか、PICOとか呼ばれる形に落とし込むことで、疑問を分かりやすくして検索しやすくなるという効能があります。社内でもよく言われる「言語化」ってやつですね。
そんなに難しくないので、ぜひ日常生活でも考えてみてください。
「薬局薬剤師が、EBMを学ぶと、学ばない場合と比べて、介入頻度が増えるのか?」とか、「私が、ビシッとスーツを着ると、普段のよれよれ姿でいるよりも、まっとうに見えるのか?」とかでもPICOが立てられますね。
step2.情報収集
次に考えたPECO(PICO)に則って論文検索を行います。今回は3つの方法でやってみました。
① Pubmed検索
データベースに直接打ち込んで検索してみます。
「Fenofibrate gallstone」23件
「("Risk Factors"[MeSH]) AND "Fenofibrate/adverse effects"[MAJR]」18件
だったので、Google 翻訳でもして、適当にザッピングします。
② AI論文検索サービスConsensus
ものぐさなので最近の流行りのAIでもやってみます。このサービスは、学術論文に特化したAIがキーワードから検索してくれるらしいです。
「How much does taking fenofibrate increase the risk of gallstones?」とGoogle翻訳で適当に英訳した文で検索してみます。
検索結果は上記から見れるので見てみてね。
③ ガイドラインからの逆引き
ガイドラインはだいたいその分野に詳しい人が作っていて網羅的に検索していることが多いので、その参照文献から何か良いものがないかを探してみます。日本のガイドラインといえば、ガイドラインの収集事業をしているMindsで検索するとよいですね。
合致しそうなガイドラインは2件ありました。日本のガイドラインは教科書的な情報も書いてあるので、さらっと読むと勉強になります。
3つの方法のどれでも引っかかっていた Dig Dis Sci. 2001 Mar;46(3):540-4. を読む論文として採用することにしました。
step3.情報の批判的吟味
ここからは、抄読会当日のお話です。1人で読んでも良いんですけど、皆で読んだ方が楽しいですし、若手の勉強にもなるので当グループでは月に1回有志で論文抄読会を行っています。
参加する場合
slackの # 課外活動-ebm_jornal_club でお知らせなどを流していますので、ご興味ある方は、覗いてみてください。
① 事例提示
お題担当者から、今回のお題についてどういった内容で、どういったことを疑問に思ったのか?などを説明します。今回は、医薬品安全性情報報告書(いわゆる副作用報告書)を記載していたので、それも配布してみました。
② 論文のPICO
初参加の方もいましたので、みんなで「どこだー?」と論文を見ながら行いました。
③ 論文の内的妥当性の✅
何をチェックして良いのかわからないので、えらい人たちが作ってくれた☑シートを使って、論文や試験の形式が適切か?のチェックを行います。 現時点では、Cochraneの推奨している以下の2つが有名でしょうか?
今回は、日本語訳のpdfが存在するRoBANDSという、少し古いチェックシートを利用しました。
試験デザインの説明なども含まれている日本語のものだと、南郷栄秀先生のThe SPELLのはじめてシートが分かりやすくて、おすすめです。
④ 結果の確認
論文の形式が問題なさそうなら結果を確認します。
Abstractにも記載されている通り、フィブラートを飲んでいると胆石症のリスクは1.7倍増えるそうです。胆石の保有率は、対照群:103/724=14.2%、フィブラート群:27/106=25.5% だったようです。
先に触れた 胆石症診療ガイドライン2021 では、1997年時点で胆石保有者数は人口の約10%と書いてありましたので、日本の方がリスクが低いものの、体感的にまぁまぁのリスク増加でしょうか。。
step4.結果の適用
抄読会は、課外活動として行っていて目の前に患者さんはいませんので、薬剤師役と患者役でロールプレイングを行います。「論文の結果をどのように服薬指導に活かすか」の練習ですね。
あとは、日常の薬局業務で「自分で調べる→患者さんの対応に活かす」ことを繰り返していけば、日常の対応の品質も向上するはず!
ぜひ興味の湧いた方は、難しくないのでお気軽にご参加ください!!
おまけ
そういえば社内の課外活動としての論文抄読会は、2014年入社の中島君の新人研修の一環として始めたんですよー
コロナ前は、コロニーハウスでカレーを食べながら論文を読むことが多かったですね〜!